※食満と潮江が同じ城に就職してるとかそういう設定
















おい

―――――――――あ?

生きてるか?

―――――――――――――――――――あァ

荒い呼吸の合間、思い切ったように明瞭な返答






完全な負け戦だった。
敗色濃厚な気だるい空気の漂う中、ただ一人愚鈍な城主のみ血気盛んにわめき散らす。
食満と潮江は、諦めの悪い主より懇意の城へ援軍を求めに遣わされた。

戦略を兵糧攻めへと移行した敵軍の包囲を何とか掻い潜り、必死の体でかの城へ。
――――――しかし、疾うの昔に彼らは裏切っていたのだった。

血みどろになりながら、視界の悪い森の中を友軍だったはずの者から逃走する。
蒸すような梅雨明けの草熅れは、遠慮もなく二人の体力を奪ってゆく。

ふらつく足と霞む頭に限界を覚え、お誂えの洞穴を見つけたときには、どちらともなく押し倒れるようにまろび込んだ。




糊を含んだように重い口を動かし安否を問うと、短いがしっかりとした答え。
それでは足りぬと言わんばかりに、背中合わせの後ろ手、互いを探り当てる。
血濡れに滑る手を逃がすまいと絡め取り、強く握り締める。
ぬめり湿った温もりと柔らかさが、どこか深い接吻のような背徳感と心地よさを与えた。

「忍者は生還してなんぼだ、くたばるんじゃねえぞバカタレ」
「てめえに言われなくても分かっているさ、馬鹿野郎」

変わらぬ悪態に、双方思わず笑いが漏れる。
暫くの間、くつくつと押し殺した笑い声が木霊していた。

我に返って後、一瞬しまった、と思ったが、かなり入り組んだ森の小さな洞穴、そうそう追っ手にも見つかるまい。
互いに預けた背中の、確かな生命の証に安堵しながら
少し、微睡んだ。






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城主は自分の非を素で認めることの出来ない、斡由(十二国記)をもっと頭悪くしたみたいなイメージ。
なので、生還したところで何かの仕置きを受けそうな感じ。

ブログの方よりちょびっとだけ、いじりました。